IT M&Aとは、SaaS、SES、受託開発、Web制作、SIer、クラウド運用、AI・データ活用支援など、IT企業・Web事業を対象にしたM&Aです。一般的な会社売却と同じく財務や契約条件を確認しますが、IT領域では技術資産、保守契約、ソースコード、クラウド権限、顧客移行、社員継続、セキュリティ体制まで整理することが重要になります。
IT M&Aで買い手が確認する主な論点
| 事業 | 買い手へ説明する資料・条件 |
|---|---|
| SaaS | MRR・ARRの対象と集計期間、解約・更新・利用継続率を契約台帳と照合します。導入支援等の一時売上、前受金、クラウド・サポート原価、開発ロードマップを分けます。 |
| 受託開発 | 案件別の採算、受注残、仕様変更、検収・入金条件、PM体制を確認します。未契約の商談と確定案件、未完了案件の追加工数・赤字見込み、保守責任を区別します。 |
| SES・常駐型 | 稼働率、単価、待機時の費用、商流、顧客集中と人員の継続意向を整理します。契約名だけで請負・準委任・派遣と判断せず、指揮命令等の実態も確認します。 |
| Web制作・SIer・クラウド運用 | 保守契約、SLA(サービス水準合意)、監視・障害対応体制、CMS・ドメイン・サーバー・広告等の管理権限を整理します。夜間対応や再委託、更新・解約条件も確認します。 |
これらは固定倍率や売却価格を保証する基準ではありません。継続利益と引継ぎ条件を確認し、評価額、当事者が合意する価格、税金や精算後の手取りを分けて考えます。株式代金を株主が受け取る場合と、事業譲渡代金を会社が受け取る場合でも受取主体が異なります。
株式譲渡と事業譲渡で変わる確認
株式譲渡では通常、契約当事者である会社が存続します。ただし、顧客・元請け・ライセンス等の契約にCoC(支配権変更)条項があれば、承諾や通知等の扱いを確認します。事業譲渡では、移す資産・契約・債務・人員の範囲を定め、相手方の承諾や契約手続きの要否を個別に整理します。M&Aの合意だけで、すべての顧客契約やアカウントが移るとは限りません。
事業譲渡で労働契約を移す場合は、従業員への十分な説明・協議を通じ、本人の真意による承諾を得る必要があります。雇用主が変わらない株式譲渡とは区別し、キーパーソンの役割、労働条件、説明時期と引継ぎ体制を確認します。詳しくは契約とCoCの確認項目をご覧ください。
IT企業のM&A売却で先に整理したい資料
情報を守りながら価値を伝えるには、資料の所在と権利者、更新日、開示できる範囲を整理します。最初から顧客名やコードの全体を出す必要はありません。事業領域、規模、商流、人員体制、希望条件を匿名概要にまとめ、候補先との秘密保持契約(NDA)と売り手の開示先・範囲の了承を踏まえて段階的に共有します。
- 契約・収益:基本・個別契約、更新・解約・再委託条件、案件別損益、請求・入金、前受金と未提供サービスを照合します。
- コード・知的財産:リポジトリ、設計書、開発・外注契約を確認します。コードを保管していることと、著作権や改変・再利用できる権利を持つことは別です。顧客へ譲渡済みの部分や外注先の権利を分けます。
- OSS・第三者ライセンス:依存関係、バージョン、改変・配布方法と利用条件を整理します。SBOMがなくても既存の依存関係ファイルから確認を始められます。OSSを無条件で利用・再販売できるとは考えません。
- 運用・人材:クラウド構成、管理者一覧、障害・脆弱性対応、バックアップ、雇用条件と担当業務を整理し、特定個人しか操作できない箇所を洗い出します。
詳しい確認項目は、既存のソースコードと知的財産、OSS・第三者ライセンスをご参照ください。
顧客データはNDAだけで一括開示しない
個人データや顧客から預かったデータは、法令・顧客契約・利用目的に応じて必要な範囲に限定します。事業承継のための交渉段階で個人データを提供する場合も、利用目的・取扱方法、漏えい時、交渉不成立時の措置等を定め、相手方に安全管理を守らせる契約が必要です。承継後も従前の利用目的の範囲に注意します。詳細は個人情報・顧客データの整理へ。
基本合意から決済・権限移管まで
基本条件をまとめ、基本合意の拘束力を条項ごとに確認します。DDで財務・契約・技術・労務等を検証し、結果を最終条件に反映して契約を締結。必要な承諾・資金等の実行条件を確認して決済し、入金と資産・権限の移転を照合します。
クラウドやリポジトリの管理者を替えるだけでは、契約名義やデータ利用権まで移ったとはいえません。決済前に移管対象・担当者・切替手順・復旧手順を決め、決済後は権限の付与・不要権限の解除、鍵や認証情報の更新、請求先と監視体制を確認します。詳しい流れは相談から成約・引継ぎまでで説明しています。
IT M&A総合センターの相談方針
IT M&A総合センターでは、譲渡企業様から着手金・中間金・月額費・成功報酬をいただきません。初回は譲渡条件を整理しながら、SaaS、SES、受託開発、Web制作、地域SIerなどの事業特性を踏まえて、候補先の方向性や譲渡前に整える情報を確認できます。
無料の対象は当センターのM&A仲介・支援手数料です。税金・登記・外部専門家の調査費用・実費、開発・移行・運用の費用等は別途です。範囲は手数料0円の説明をご確認ください。
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参考:IPAのモデル契約(知財・OSS・契約移転)、個人情報保護委員会の通則編、厚生労働省の派遣・請負ガイド、事業譲渡等指針。モデル契約はすべての取引に一律適用される規定ではなく、実際の契約・法令に応じて確認します。